4月から値上げラッシュ。日本は、そして医師は本当に豊かなのか?

2016/04/11

4月から値上げラッシュ。日本は、そして医師は本当に豊かなのか?

前回のコラムでは2040年頃には医師が34,000人も余剰になるという見通しを厚生労働省が発表したという話題を取り上げた。そして既に日本は人口減少時代に突入しており、これまでの量的拡大から質的向上を目指すべきという私の個人的見解を述べた。

今日はその日本の質的向上について身近な話題から考えてみたい。
たまに行くカフェに4月になって初めて行った時の事。その店は数種類のモーニングメニューがあり朝から人気の店なのだが、私がいつもオーダーするメニューをウェイトレスさんが覚えてくれていて「いつもの?」、「はい。」で普段は注文が完了するのだが、その日は「4月から値上げなんです。」と申し訳なさそうな表情で仰る。
これまで380円だったモーニングが420円になると言う(1割超の値上げ)。それだけではない。値上げになる上、これまで付いていた小さなサラダが付かなくなると言う。
何となく釈然としないものを感じながらも、まあ、いいかと、その日はそのままオーダーしたが、次回以降の為にメニュー内容を改めて確認したいと思いメニューを貰った。
たった40円の事と思われるかもしれないが、率にすると1割を超える値上げである。

しかも1年前の今頃にも一度値上げがあり、僅か1年の間に2回も値上げがあったのである。
前回はメニューの内容は変わらず値段だけが350円から380円に上がった(率にして約9%の値上げ)。
去年の今頃は消費税が5%から8%に上がったタイミングだった事もあり、まあ仕方がないかと納得したが、今回は内容を改悪する(サラダが付かなくなった)上に1割を超える値上げである。理由は敢えて聞かなかったが、恐らく様々な原材料コストが4月から値上げとなっている事を受けて止む無く値上げをするという事だと推測している。

元々このカフェに時々だが行くようになったのは、場所が良い事と350円にしてはその内容が充実しているというか、コストパフォーマンスが高くお得感があると最初に感じたからなのだが、このカフェは今時珍しく全席喫煙OKで愛煙家の人たちが常連客となって集まっている店なのである。空気清浄機は備えてあるものの、客の大半が喫煙者の為、煙草を喫わない私にとってはその点においてはお世辞にも快適に過ごせる場所とは言えず、最早この店に通う理由は無くなってしまったと今回のメニュー改悪と1割を超える値上げのWパンチを受け、考えさせられた次第である。

何もこの店の営業姿勢を批判しているのではなく、そういう経済環境の中に一般庶民の暮らしやお店も既に放り込まれており、様々なコストアップ要因から仕方なく値上げや中身を少なくする(実質値上げ)などの企業努力をせざるを得なくなっているという事を実感する出来事だったのである。トイレットペーパーも紙幅をギリギリまで狭くして原材料の値上げ分を売価に転嫁しないで何とか凌いでいると言うがこれとて量が減っているのだがら実質的には値上げである。

前置きが長くなったが、政府はアベノミクスで日本経済は順調に回復しており2020年の東京オリンピックに向けGDP600兆円を目指す方針だと言う。ちなみに2015年の日本のGDPは約500兆円(2015年10月時点のIMFによる推計)で、今よりも2割も拡大するという計画である。
海外から日本を訪れる外国人観光客が激増し、彼らが日本で爆買いをしてくれたり、ホテルの稼働率が軒並み上昇したりといったプラス要因もあり、その実現可能性については何とも言えないが、我々日本で暮らす者としては、出張時にホテルが取りにくくなり、宿泊料金もホテル側が強気の値段設定に転じて高騰しているなど、マイナスの影響の方が多いような気がする。
日本のGDPが拡大しても個々人の所得(特に可処分所得)が増えないと意味が無いのである。

医療機関にとっての消費税のアップは経営を圧迫

国の財政状況が厳しい為、政府は消費税を10%に引き上げる事を決定している。その実施時期については流動的だが、個人にとっては出ていくお金が増える事は既に決定事項なのである。
医師の方に直接的に関係が深いものとしては病院経営にとっての消費税である。医療機関の経営は消費税増税の影響を受けやすい側面がある。なぜなら医療機関にとっての売上である診療報酬は非課税の為、患者さんや保険者に消費税のアップ分を請求する事は出来ない。他方、支出項目である医療材料費などには消費税が掛かる為、消費税が増税されると医療機関の支出は増え、その分、収支が厳しくなり経営姿勢がこれまでよりもシビアになる事が予想されるからである。
※一応、消費税の増税に伴い診療報酬の一部は引き上げられている。

アルバイトの回数を増やす医師が増える?

医師の方も実生活で考えると、年収が増えないと、同じ生活を送っていたとしても消費税増税に伴い家計支出は増え、更に社会保険料負担も徐々にアップするなど可処分所得は確実に減少する。
学会出張の際などにホテル宿泊費が高くなっている事なども実感しておられる医師の方もいると思うが、当直やアルバイトの回数を少し増やして生活防衛をする医師が増えるかもしれない。

私は日々多くの医師の方から色んなお話を伺うが、収入は多いが支出も多いというのが医師の方に見られる一般的な傾向で、今の日本は(特に都市部においては)生きていくのにとてもお金が掛かる構造になっているように感じる。
高い報酬を得ようと思うと遮二無二働くしかなく、ゆっくり働こうと思うと、安い報酬に甘んじるか、或いは医師としての自分の理想像やプライドといった何かを捨てて仕事の内容や拘りは二の次にする必要があったりするのが現実かもしれない。

今回は、少し長くなったので次回に続けたい。

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著者:三木正孝


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